ドリアン助川さんの『あん』を読んでいて、私が付箋をつけたページを感想と一緒にご紹介します。
とても考えさせられる話で、目を背けてはいけない問いを投げかけられた本でした。
『あん』 ドリアン助川/著のあらすじ
内容・あらすじ
舞台は小さなどら焼き店。
店主は、人生を投げやりに過ごしている千太郎。千太郎がいつものように鉄板に向かっていると、バイトの求人をみてやってきたのは、70歳過ぎの手の不自由な女性、吉井徳江だった。
彼女のつくる「あん」の美味しさに魅了された千太郎は、彼女を雇うことに。
すると、それまで閑古鳥の鳴いていた店は繁盛しはじめる。
しかし、偏見のなかに人生を閉じ込められた徳江と千太郎は別々の道を歩むことに…。
『あん』は、西川美和監督によって映画化もされている本です。
映画化では、事情を抱えた吉井徳江役を樹木希林さんが演じていらっしゃいます。
『あん』 ドリアン助川/著の感想と付箋を付けたページ
私が、『あん』の中で付箋をつけたページは、ラストに近い部分です。
千太郎は、営んでいる小さなどら焼き屋も、もともとは事情があって仕方なく始めた仕事。
お店に立つといっても、お店を開けるのはお昼頃だし、あん(餡)も出来合いの物を使用しているくらい、ダラダラと仕事をしています。
仕事だけでなく、人生にも投げやりな千太郎。
その姿から、私は、彼は生きているというよりも、死に向かってただ時間をやり過ごしているように感じました。
そんな、お店にも人生にも、投げやりな千太郎が、70歳過ぎの手の不自由な女性、吉井徳江と出逢い、そして理不尽な…でもどうにもならない理由での別れを経た後、道端に向かって、声を発するんです。その言葉が心に残りました。
その言葉が、付箋を付けた1ページ。
どら焼きいかがですか!
私は、「どら焼きいかがですか!」の言葉に、涙が溢れました。
この言葉に、千太郎の魂を感じたからです。
この言葉は、千太郎の決意であり、宣言であり、魂だと感じたんです。
千太郎は、自分の「生き方」を決めたのだと思いました。
千太郎は、吉井徳江との出逢いを経た後も苦しい状況はから抜け出せませんが、というか、むしろ、より追い詰められていくのですが、それでも、声を上げるんです。
「どら焼きいかがですか!」って。
この本を読んでいる時、私は生き方に迷っていました。
そして、その答えを周りの人のブログやフェイスブック、情報の中から探そうとして、いろいろな人の価値観に振り回されていました。
そんな時に出逢ったのが「どら焼きいかがですか!」です。
自分自身が良いと感じたことを、素直に「良い」と声を上げる。ただ、それだけでいいのだと分かったんです。
自分自身の心から出てくる、おいしい たのしい きれい しあわせ すき・・・の気持ちを1番大切にしていい。
人の意見とか、周りの情報とかじゃなくて、自分を信じていい。
自分が信じていることをやれば(声に出せば)いい。
やる(声を出す)というのは、自分の生き方を宣言すること。
世の中に対しての宣言。
そしてなにより、自分自身に対して、私は、こう生きるのだ!という宣言。
「どら焼きいかがですか!」から、そんなことを感じました。
本日紹介した『あん』のご紹介
私の感想を読んで気になっていただけたら、ぜひ読了後に感想をコメント欄で教えてくださいね♪
生きる不自由さを抱えたとき、きっと胸に響く言葉が見つかります。
『あん』ドリアン助川/著